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駅木・駅花(エキボク・エキバナ)への旅


 沿線に咲く四季折々の花。車窓からも眺められますが、時間があれば列車を降りて、心ゆくまで眺めてみませんか。ここでは、そんな車窓・駅で花見ができる駅のご紹介です。なお、花の見ごろはあくまで目安で、その年の気候により大きく異なります。確認のうえお出かけください。


 伊豆急行線 河津駅Kawazu

 奇しくも2駅連続で静岡県の駅が出ることとなりました。こちらは伊豆半島南東部、よそ者からすれば暖かいイメージが強いところにあります。

 この駅に咲く桜はいっぷう変わっています。その名を「河津桜」といい、ヒカンザクラとオオシマザクラの早咲き種の自然交配種であるといわれています。サクラの代表品種であるソメイヨシノよりも花びらが大きく、ピンク色が強いのが特徴です。一説には1955(昭和30)年、地元の方が河原に自生していたサクラの木を見つけ、自宅に植え替えたのが始まりとされています。

 知らない方が訪れると、シーズン中でも駅を降りてもすぐには桜の存在には気づかない事と思います。駅は築堤の上にあり、桜の木は築堤の下に植えられていて、電車の中からでも確認できにくいところにあるからです。列車交換の停車中にも見ることは可能ですが、駅前の桜を見て満足してはいけません。せっかく降りたのなら、河津川沿いの堤防を歩いてみる事をお勧めします。まさに「目を見張る」光景が待っているはずです。

 このサクラがもてるのは、その開花時期にあるのではないでしょうか。2月初旬、世の中はまだまだ冬です。人々が春を待つ2月初旬に、ここでは早くもサクラが、それも他にはない印象的なピンク色の花をまとう。同じ時期に咲く菜の花とともに、そのコントラストは冬のモノトーンの世界を見慣れた身にはとりわけ鮮烈に映るに違いありません。少なくとも私はそうでした。

 人々が待ちわびる春が一足も二足もはやく訪れる。そのような町ですから、シーズン中は大変混み合います。首都圏から近いという事もあるでしょうが、二ヶ月弱早く咲く桜が、これほどに集客力があるものなのかと素直に驚くとともに、人々の春を待つ気持ちが伺える一瞬を身をもって感じることができます。その混雑は相当なものです。私が訪れた時は「桜まつり」の期間中、しかも満開の時期で、特急の自由席には人が納まりきらず、指定席のデッキに人が溢れる状態。駅に着いたら改札を出るまで相当な時間を要し、さて改札を出たら会場まで続く行列…。私正直、花見にこれだけ混んだという経験がありません。

 ということで、空いた時間にゆっくりと桜を眺める、ということであれば、やはり朝。この地に投宿し、少し早起きして早咲きの桜を眺める。少々寒いですが、寒さを忘れるような光景が待っていると私は思いますし、それが1本の若木から始まり、桜並木を形作るまでに育て上げた地元の方々に対するお礼なのかな、とも思います。

 地元の人、観光客、それぞれに大事にされる桜。その咲きようの素晴らしさとともに、咲く時期の早さ、そして約1ヶ月という開花期間の長さに、「ちょっとおいしいよなあ」と羨ましさを感じるのは、私だけでしょうか。

河津駅下りホームから見た桜 下田行き電車と桜

◆例年の見ごろ:2月上旬〜3月中旬(満開の時期はこのうちの1週間程度)

◆撮って出し
 河津駅を含む、周辺地域の画像はこちらからどうぞ。→その1 その2

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 R九州指宿枕崎線 山川駅Yamakawa

 秋口に差し掛かるというのに、9月末の南九州は焼けるほどの暑さです。山川駅を訪れたのは、そんな暑い日中のことでした。

 この駅どまりの列車を降りて、少し構内をぶらぶら。アイドリングをしていたディーゼルカーのエンジンが切られると、駅前を時々通る車の音を除いては殆ど音がない、静かなところになりました。この駅の山側、崖に面したホームに、ハイビスカスが植えられています。ハイビスカスといえば南国を代表するような花で、派手なイメージを持っていましたが、鉢植えではなく露地もののそれを見ると、思ったよりも地味で健気な印象を受けます。

 人気の少ない待合室を抜けてトイレで用を足していると、駅長さんと一緒になりました。「ホームのハイビスカスですけど」「お。あれか」「いつも咲いてるんですか?」「だいたい4月から11月くらい、年中咲いとる。」そんな会話をしつつ、駅まで戻り、しばらくお話を伺いました。ここ山川では、ハイビスカスに加えて、日本最大のモンシロチョウ「ツマベニチョウ」が見られるそうです。アゲハチョウくらいあるそうですが、私が訪れた時は、残念ながらその姿を見ることが出来ませんでした。

 少し誇らしげに話す駅長さんの横顔を見ながら、地元に誇れるものがあるっていうのはいいなと思いました。私の住んでるところ、あまり誇れるものがないんですよね…。

 ハイビスカスのほかにも、ブーゲンビリアなど特徴ある南国の植物がたくさんあります。夏は暑いですが、暑さに負けない彩りを添える花々を、汗を拭きつつ見てまわるのもまた楽しいかもしれませんね。日焼けに注意。

 しばらくの小休止の後この駅を後にし、終端の枕崎を目指しました。この駅から枕崎行きの列車に乗ったのは、私を含めて3人でした。

山川駅ホーム。ハイビスカスは右手に咲いています。 山川駅ホームに咲くハイビスカス ハイビスカスのアップ


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