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駅木・駅花(エキボク・エキバナ)への旅


 沿線に咲く四季折々の花。車窓からも眺められますが、時間があれば列車を降りて、心ゆくまで眺めてみませんか。ここでは、そんな車窓・駅で花見ができる駅のご紹介です。なお、花の見ごろはあくまで目安で、その年の気候により大きく異なります。確認のうえお出かけください。


 JR九州久大本線 夜明駅Yoake

 不思議なことに、ひとつのコーナーに「夜」という、駅名にはあまり出てこない字を使った駅が2つ登場することになりました。

 夜明駅。この駅名が持つイメージに、あまり悪い印象を抱く人は少ないように思います。九州中部、久留米と大分を結ぶ久大本線にある駅です。小倉駅近くの城野というところから分岐し、田川伊田、彦山を経由してやってくる日田彦山線との乗換駅ですが、すべての列車が日田まで直通するためか駅は無人になっていて、乗換駅の割には小ぢんまりとしている、という印象を受けます。そして、私がここを通ったきっかけというのは、やはりその希望に満ちたような駅名に魅かれたからでした。

 大分からの途中豪雨の洗礼を受け、遅れていた列車からこの駅に降り立ちましたが、ここでは雨は止み、一時ながら日も差すような天気でした。静かな無人駅に降り立った私を迎えてくれたのは、やはり静かに咲くコスモスでした。

 花は駅舎脇に多く植えられていて、殆どがオレンジのもの。ただしコスモスは一年草ですので、来年にはまた違った色のものが咲いているのかもしれません。それは行ったときの楽しみかもしれませんね。

 実はこの駅、何もない状態でも十分な趣のある駅でして、このコーナーと「素敵な駅へのご招待」と、どちらに載せるか正直迷ったんです。しかしながら訪れたときに目に飛び込んできた光景、つまり一面に咲くコスモスが咲いていなければ掲載はしなかったように思います。ですので、普段でも雰囲気のよい駅ながら、咲いていた花々がそれをよりよく増長させた、ということで、こちらに載せる事にしました。そう考えると、「いつ訪れるか」というのもまた、旅においてはかなり重要なことなのでしょうね。

 またコスモスもフヨウも、国内では場所を問わず古くから広く見られる花で、とりたてて珍しいものでもありません。それが何故にここまで印象的に映るのか。それはやはり、このなんともいえないロケーションの中に存在するからに他ならないのではないか、と考えています。駅の施設も、植物も、それぞれ利用補充しあうような格好で全体の雰囲気を高めている、そんな気がします。

 そのような情感が車窓からも感じられるのか、はたまた私のように名前に惹かれて降りてみて雰囲気が気に入るのか、ここに降り立つ人は少なからずいらっしゃるようで、待合室にはノートも置かれ、大切に管理されています。「癒されました」「また来たいです」というよくある書き込みの中に混じって、真偽のほどは定かではありませんが「死に場所を探してこの駅に辿り着きました。もう一度やり直してみようと思うようになりました」というような書き込みも。この方にとっては、絶望の淵から一歩戻らせる何かがこの駅にはあったようです。

 旅の途中、途中下車して次の列車まで何もせず、ただ佇んでみるのもいいと思います。派手さはないですがけなげに咲き誇る花々に囲まれると、癒されます。悩んでいる方にとっては処方箋になるかもしれませんし、文字どおりあなたにとっての夜明けが待っているかもしれません。

夜明駅改札外からホームを望む ホームに咲く花々と到着する日田行き普通列車

◆例年の見ごろ:8月下旬〜10月下旬(花の種類により開花・見ごろの時期に差があります)

◆撮って出し
 夜明駅の画像はこちらからどうぞ。(画像が多いため、表示に時間がかかる場合があります。)

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 井川鐵道大井川本線 家山駅Ieyama

 家山駅は静岡県中部、金谷と千頭を結ぶ大井川鐵道にあり、路線の中継地として交換設備をもった駅です。駅員も配置されています。

 この路線は沿線に自然が多く、またサクラひとつとってみても、それは数多くの駅に植えられ、多くの駅で目にすることができます。普段ならそこはへそ曲がりな私、あまり有名ではない駅を挙げるはずなんですが、今回は特別、ごくスタンダードな選定になりました。

 もちろん他にも素敵な駅があるわけですが、私がここを挙げる理由はホーム沿いに咲く桜と、かつての典型的なスタイルの駅舎との組み合わせ、これに惹かれたからなんですね。自動券売機というような無粋なものはなく、窓口で切符を買う。出てくる切符は厚紙の立派なもの。切符に鋏を入れてもらい、木製の改札口をくぐると真正面には満開の桜…。かつては日本各地で見られたであろうこういった景色。今は探さないとなかなか見つかりません。

 また、よそ者というせいも勿論あるのでしょうけれども、この駅では時間がゆったりと流れているような気がします。時間が許せばホームに出て、春の暖かな日差しを背に浴びながらゆったりと花見。気が付けばうたた寝、という時間のすごし方もいいかもしれません。

 そして、この路線はSLが走る路線でもあります。桜の時期はSL急行が最大3往復の運転。舞う薄桃色の花びらの向こうにはくろがねの蒸気機関車。かつてどこでも見られた光景が、ここにはあります。少年の頃の情景、タイムスリップしたような旅を楽しみたい方にはうってつけの場所なのかもしれません。

家山駅改札口 家山駅ホーム

◆例年の見ごろ:3月下旬〜4月上旬(満開の時期はこのうちの1週間程度)

◆足をのばして:SL好きの方には川根温泉笹間渡駅下車すぐの「川根温泉ふれあいの泉」がおすすめです。いくつかあるお風呂のうち、露天風呂からは雄大な風景の中を走るSLが眺められます。

◆撮って出し
 家山駅の画像はこちらからどうぞ。(画像が多いため、表示に時間がかかる場合があります。)
 大井川鉄道沿線の画像はこちらからどうぞ。(画像が多いため、表示に時間がかかる場合があります。)

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