沿線に咲く四季折々の花。車窓からも眺められますが、時間があれば列車を降りて、心ゆくまで眺めてみませんか。ここでは、そんな車窓・駅で花見ができる駅のご紹介です。なお、花の見ごろはあくまで目安で、その年の気候により大きく異なります。確認のうえお出かけください。
JR九州日田彦山線 採銅所駅Saidosho
北九州・小倉から内陸部に入るのが日田彦山線です。感染の日豊本線から分岐しますが、数駅進めば九州内陸ののどかな風情が広がる、何ともよい路線です。採銅所駅は、そんなのどかなところにあります。
採銅所という名前が目を引きますが、その名の通りここは以前は銅の採掘が盛んで、1950年ころまでは、採銅所村という独立した村だったとのこと。そう聞きますと少なからずそういった施設が車窓から見え隠れする所なのかと思い下車しましたが、実際には他と変わらぬ、非常にのどかな光景が広がっていました。ウグイスの声に迎えられて下車しました。この駅の両側に、駅を取り囲むようにサクラが植えられています。
駅は交換可能な1面2線。この駅で列車交換があることも多いです。ホームに滑り込み、対向列車が来るまでしばらくの間停車。その間に車窓からお手軽にサクラを眺められる駅でもあります。しかしながら私はあえて降りてみることをお勧めします。ここは非電化の路線。架線のないすっきりした空が迎えてくれます。そしてその空へ吸い込まれそうな勢いで咲き誇るサクラ。じっくり眺めてみると、その根元に菜の花も咲いていたりと、列車の中からでは気付かなかったことも見えてくるかもしれません。そしてもう一つのお勧めは駅舎。無人駅ですが、かなり凝った意匠を持つ駅舎が迎えてくれます。私が行った時は少し早くて3分咲き程度でしたが、列車はおよそ30分おき。次の列車が来るまでに、静かな駅の満開の桜の下でゆっくり物思いにふけるのも、いいかもしれません。
◆例年の見ごろ:3月中旬〜下旬
◆撮って出し
採銅所駅の画像はこちらからどうぞ。
富士急行大月線 東桂駅Higashi-Katsura
富士急行線は山梨県側の富士山麓を走る、富士山に一番近い鉄道。起点の大月を出るとほぼ昇る一方の線形でぐいぐいと富士山麓を目指す路線です。途中の富士吉田にはスイッチバックあり、「富士登山電車」「トーマスランド号」「フジサン特急」など、走る車両はどれも個性的なものばかり。またJRからの直通電車もあり、東京で見慣れた電車も短編成になって入ってきたりと、なかなかに見どころが多く、楽しい路線です。この路線の中ほどに、東桂駅があります。この駅のホームに、数十本の桜の木が植えられています。
この駅の特徴は、毎年桜のライトアップがされていること。昼間の桜も絢爛で美しいですが、夜桜もまた乙なもの…と、この駅の初訪問は夜にしてみました。降り立ったのは私一人。ライトアップがされている駅だからさぞ降車する人が多いのかと思いきや、これは意外でした。
ホームに降り立ってみると、ライトアップされた桜は大変見事です。いずれも樹齢はそこそこのもので、枝ぶりが素晴らしいです。そして何より素晴らしかったのが、この素敵な風景を、ほぼ独り占めの状態で眺められたこと。近くに住んでいる人でしょうか、たまにちらほらと改札外の柵越しに眺められる方はいらっしゃいますが、改札内やホームにはほぼ私一人きりの状態。途中で富士吉田方面からの企画列車「夜桜号」が到着し、折り返しまでの約20分間はホームはにぎやかになりましたが、それでも20人足らず。都心や大きな公園での夜桜見物を考えると、ごくごく少ない人数です。その列車も出てしまうと、ホームにはまた元の静寂が訪れます。
20時40分、駅の改札業務が終了します。「ご精が出ますね。寒いですから体に気をつけて。」そう言って委託の駅員さんが窓口を閉めてしまうと、本当に一人っきりになってしまいました。ライトアップはまだ続くので淋しくはないのですが、かえってこんな素敵な光景を独り占めにしてしまっていいのかと、そういう思いすら湧いて来てしまう光景でした。
この駅は、是非ご自身でのご来訪をお勧めします。できれば夜のほうがいいと思います。一人夜桜を心ゆくまで眺める。都会ではそうそうできない経験が待っていると思います。
◆例年の見ごろ:3月下旬〜4月上旬
◆撮って出し
東桂駅の画像はこちらからどうぞ。
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