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トンネル駅へのご招待


 トンネルの中を走っていると、突然列車が減速する。「事故かな?」と思っていると、やがて外にぼんやりと明かりが見えてきて、列車が止まる。それがトンネル駅。アクのきつい、不思議ゾーンへ行ってみましょう。


JR北海道津軽海峡線
吉岡海底駅/竜飛海底駅

 ご存じ、青函トンネル内にある駅。北海道側が吉岡海底、本州側が竜飛海底です。基本的には駅としてではなく、防災・避難場所として設けられたものです。駅舎はありません。

また見学には「ゾーン539」カードが必要で、一部の快速「海峡」号のみが停車するのみなので注意して下さい。

 列車が駅に着くと、車掌さんが、見学専用車両のみドアコックを操作して扉を開けてくれます。見学時には2人の係員が同行してくれます。近海の魚を展示したミニ水族館や青函トンネルに関する展示、オレカ販売(昔はオレンジカードを買うとカードホルダーをくれた=下右写真=)もあり、退屈な地下空間を感じさせない配慮がされてます。

 それに広大な避難所とでかい排水ポンプ。無機的で、寒々してます。毎分30トンの水がトンネル内に湧き出しているので、排水ポンプは24時間フル稼働しています。一部は非公開。何でも国が国なら軍事機密に匹敵するような設備がいっぱいあるそうな。

 あと、トイレ。こんな地下駅なのに、ちゃんとトイレがあります。吉岡海底駅のは、「世界で最も深いところにあるトイレ」だそうです。ちなみに、第2位のトイレは、竜飛海底駅。身内で独占してます。

  「トンネル」を売りにした、トンネル2駅でした。

吉岡海底駅 カードホルダー


JR東日本上越線 土合駅Doai

 ここは有名っすよね。ここの下り駅が関越国境の新清水トンネル(13,500m)の中にあります。駅舎と上り駅は地上です。

 最大の特徴は駅舎まで10分程度かかること。ホームから気合いで462段、338mの階段通路をのぼります。薄暗く、湧き水の音だけが暗いトンネルに響きます。さりげなく地底人やオバケが居ても不思議ではない雰囲気です。意味なく大声を出したくなります。

 やっとの思いで階段を上りきると、さらに143mの通路が待ってます。あまりの遠さに気も遠くなりかける頃、やっと駅舎に着きます。ふー疲れた。

 意外なのが、無人駅なのに結構人の出入りがあること。名峰・谷川岳への登山口であるとともに、「日本一のモグラ駅」としてツーリングマップに掲載されているため、駅自体が観光スポットになっているからなんですね。バイクで来て、下りホームまで往復してくる人、結構居ました。

    しかしながら、列車本数は極端に少なく、日に片道5本。行ってからでも気合いと体力がいる土合ですが、この本数、行く前にも相当の覚悟がいる駅ですね。間違えても「あっ、しもた!乗り越してもた!」と慌てて飛び降りてはいけない駅です。

土合駅駅舎 トンネル内部


JR東日本上越線 湯檜曽駅Yubiso

 土合駅の水上方の隣駅が、この湯檜曽です。この駅も土合同様、下り線のみが新潟から続く新清水トンネル内にありますが、上下線は土合のようには離れてません。トンネル内といっても、入口近くなので、まだ外光が差し込むから、土合駅のように、この世に自分一人になったような絶望感を味あわなくてすみます。

 この駅からも谷川岳に登れるのですが、土合に比べるとひっそりしていて、地味な印象を受けます。個人的にはこちらの方が気に入っているんですが。

 

 無人の改札をくぐると、早くも湿った冷気が身を包みます。夏などですと、非常に気持ちいい、天然のクーラーになります。

 さらに、近くには鄙びた趣が最高の湯檜曽温泉もあり、上り線のループ線にある旧湯檜曽駅を見がてら、外来入浴っていうのもいいかもしれません(ループ線と上りホームの画像はこちらにあります)。

 湯檜曽駅駅舎 トンネル内部


野岩鉄道会津鬼怒川線 湯西川温泉駅Yunishigawa-onsen

 栃木県と福島県の県境近く、川治温泉のお隣にある小駅です。

 駅自体は開業年度の新しい鉄道だけあって、きれいです。ここも湯檜曽同様トンネルの入口付近にあって、外光が差し込むので、比較的明るい?駅です。

 トンネルを出たところが五十里湖(いかりこ)という湖で、駅をトンネル内に作るか鉄橋上に作るか選択の結果、トンネルにした、という雰囲気が伝わってきます。ちなみにこの鉄橋、ホームの上を通る道路から眺めることができます(下写真)。駅を出てみましょう。駅舎までは階段が続きますが、短いものです。

 この手の駅には珍しく、駅は有人です。私が訪れたときはお昼で、事務室内ではおばちゃんが2人、仲良くお弁当を食べていました。駅を出てすぐに土産屋があります。駅入口は別にあって、この建物を通らなくとも駅に入れるのですが何故かここが「湯西川温泉駅」の看板を揚げてます。

 駅前にはタクシーが止まり、また湯西川温泉へのバスも出ており、想像よりも賑やかなところでしたが、長閑な空気が流れる、雰囲気のよい駅でした。
湯西川温泉駅 トンネル上から列車を見るトンネル内部


北越急行ほくほく線 美佐島駅Misashima

 この駅をナメてはいけません。史上最強のトンネル駅です。

 ほくほく線は信越本線犀潟と上越線六日町を結ぶ第3セクター。20年来の地元の熱意が通じて開業した路線です。そのためか駅は無人駅ながらいずれも立派で、この駅の待合室も畳敷きの立派なものです。地元の観光案内もあります。それでは早速ホームに降りてみましょう。

 駅舎からホームへは100段程度の階段が通じています。階段を下りきったところにも待合室があります。階段から待合室へ入る所と、待合室からホームに出る所に頑丈な鉄製の扉があります(下写真)。無機的で、冷凍倉庫の中に居るような気分になります。このホームへのドア、列車が停車してからしか開かず、また停車時でもどちらか一方の扉が開いていると、別の扉は開かない仕組みになっています。

 で、どうしてこのような仕組みになっているかといいますと。この路線は新潟県内陸と上越・北陸地区を結ぶ速達路線。特急が在来線最高速の時速160kmで通過するからなんですね。私も地下の待合室でその恐怖を体験してみました。

 しばらくすると、「ヒュー」という風切り音が聞こえてきます。列車がトンネルに入ったようです。音はだんだん大きくなります。「・・・高速で電車が通過します。大変危険です。ホームには絶対に出ないで下さい」という最上級の注意放送が流れた後、特急が通過していきました。キーンという風切り音がうるさいどころか痛い。1人だと大変こわいです。

 このように、地下では通過列車ごとに恐怖ですが、地上はいたって穏やか。数軒の別荘と変電所以外はなにもない田園風景を満喫できるところです。まだ行ったことのない人は訪問をオススメします。
美佐島駅駅舎ホームへの階段待合室の様子駅舎内部の様子


JR西日本北陸本線 筒石駅Tsutsuishi

 北陸本線でもとりわけ風景の良い、新潟県南部にあります。駅舎自体はプレハブチック。

 この駅は開業当初はトンネル駅ではありませんでした。海寄りの集落の中に地上駅としてありましたが、頸城トンネルの開通にともない、現在地にトンネル駅として移転しました。旧線跡は、今も駅から下った筒石の集落内に見ることができます。

 駅自体もさることながら、駅舎の脇は深い谷になっていて、その上を北陸道が大胆に跨いでいます。高低差40m。これは筒石駅の駅舎からホームまでの高低差と同じ。ホームまでの見えない距離を、高速道路を使って実感できます。

 駅は委託ながら有人。2人の優しい駅員さんが出迎えてくれます。私が訪れたときはお茶とコーヒーを出してくれました。また、入場券を買うと、この駅の構内図が付いたパンフが頂けます。駅ノートや、この駅が掲載された雑誌も置かれ、退屈するということはありません。この駅の人気の高さ(というより、駅員さんの人気の高さ、と言ったほうが正確かもしれません)が窺えます。

 下右の写真は、ホームへ続く通路です。土合駅と似たような印象を受けますが、こちらは短め。土合よりも生活感があり、列車ごとに結構乗降があります。

 ホームに降りてみますと、美佐島と同じく、強風防止の鉄製扉があり、その手前に待合所があります。ここも特急が130km/hで通過する特急街道。乗り降りの際には十分気をつけましょう。

 特徴的なのは、上下でホームがずれて設置されていることで、こうすることによりトンネル断面を小さくすることができ、工費も節約できるそうです。

 駅員さんの優しさや、駅ノートがあったこともあってか、トンネル駅では一番印象に残った駅でした。

筒石駅駅舎 トンネル内部の様子


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