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素敵な駅へのご招待(私鉄編)


 日本全国津々浦々、たくさんの駅がありますが、その中でも独特の雰囲気を持つ駅があります。「旅情を味わえる駅」、「駅らしい駅」。この項に登場する駅は、私オススメの、そんな駅です。


京浜急行本線 県立大学駅Keritsudaigaku
 突然ですが、「私の好きな駅のタイプ」というのがありまして。

 1.坂の町の小駅(個人的に、「坂」というシチュエーションに弱い)。
 2.ホームはカーブに設けられた島式ホーム。
 3.駅舎は古風な洋館風。
 4.ホームから海なんかが見えれば最高。
 5.そして、全体が生活感に溢れた駅。

 なかなかないなあ、と思っていたら、ありました。この駅です。1から5の条件に合致する駅です。神奈川県は横須賀の、海を望む高台にあります。

 昭和5年築という駅舎は、正面の明かり取りが凝った洋館風。トイレは別棟になっているのですが、こちらまで洋館風で統一するという凝りよう。駅舎とホームは地下道でつながっています。では、ホームに出てみましょう。

 配線は1面2線。左の写真は品川方向を撮ったものですが、三崎口方はゆるくカーブを描いています。そしてホームからは、坂に建つ家並みの向こうに海を望むことが出来ます。

 また、駅周辺は民家が所狭しと建ち並び、坂の町にありがちな「妙な上品さ」もありません。人通りが多く、賑やかなところです。初めてなんだけど、どこか懐かしい。そんな気がする町と駅です。

※画像は旧駅名の京急安浦時代のものです。

参考文献:「旅」97年1月号付録
「日本の鉄道全駅駅名総覧9938」
県立大学駅ホーム 県立大学駅駅舎 ホームから
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南海電鉄本線 浜寺公園駅Hamaderakoen
 この駅を端的に言うと、『駅が博物館』でしょうか。駅舎は明治40年築、国宝級の駅です。さきに隣駅、諏訪ノ森駅西駅舎とともに大阪府指定文化財に登録されました。

 設計は、赤煉瓦の東京駅設計で知られる辰野金吾氏。白亜の駅は、ハーフチェインバーと呼ばれる柱を埋め込まずに壁面装飾として活かす建築様式が採られるなど、凝りに凝ったものです。

 南海も、この駅にはそれなりのこだわりを持っていると見えて、待合室を更新するときも先代待合室の雰囲気を壊さない造りのものにしたり(写真はここ)、「スルッとKANSAI」導入直前まで自動改札機を導入せず、新入社員の駅務実習駅として活かしたりしていました。

 構内に目を転じると、配線がまた面白い。ホームは2面4線ですが、上りホームと下りホームは若干ずれていて、更に上り待避線は難波寄りに一編成分ずれたところにあります。これはかつての始発電車用のホームを待避線に転用したもので、独特の趣があります。駅舎と下りホームとは地下道・構内踏切(近郊駅では珍しい)で連絡しています。

 この駅は是非一度、訪れて自分の目で確かめられることをお勧めします。現代離れした顔の「ラピート」との対比を楽しむのも面白いかもしれませんよ。
 参考文献:南海電鉄発行「南海の駅」
浜寺公園駅駅舎 浜寺公園駅ホーム 浜寺公園駅ホーム
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京阪電鉄本線 萱島駅Kayashima
 複々線にある高架駅です。一見どうってことない駅ですが、このページに挙がる理由はホームに出ると分かります。

 この駅の大阪(淀屋橋)方面行きホームには、大きなクスノキが1本、地上からホーム屋根を貫いて生えています。高さ20m、幹周り7m、樹齢何と700年。どうしてここに木が?

 話は約30年遡ります。昭和47年、京阪が高架複々線工事に着工するとき、隣接する萱島神社にあったこの木は、高架事業用地にかかってしまいました。当時切ってしまう話だったようですが、「切ってしまうには偲びない」「たたりがある」という地元の請願を受け入れ、京阪はこの木を切らずに、図面を引き直して駅を高架にしたという事情のある駅なのです。高架化に伴って、神社も移設されました。

 当時は環境・自然保護などの運動も盛んでなく、よく地元も請願したし、京阪もよくこれをうけいれたものです。懐深いですね。

 ホームで電車を待ってますと、木の葉が風でこすれる「サワサワ・・・」という音がとても心地よい。蒸し暑い夏だって、この音を聞くだけで暑さが和らぐような気がします。木漏れ日のある高架駅なんて、そんなにないですよ。1本のクスノキをめぐる、ちょっといい話でした。
萱島駅全景 ホームとクスノキ
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