旅と鉄の盲腸にっぽんの駅 >素敵な駅へのご招待(私鉄編)2ページ

名古屋鉄道瀬戸線 尾張瀬戸駅Owariseto
 瀬戸は「せともの」という言葉に代表されるように、焼き物の町。「線路脇に窯元があれば、山積みの陶器と名鉄電車を撮ってみよう」と訪れたのですが、残念ながら窯元は線路際にはなし。少々ガッカリした気分を吹き飛ばしてくれたのが、この駅舎でした。

 大正15年築という駅舎は瀬戸線が名鉄になる前、瀬戸電気鉄道の頃に建てられたもの。当時のモダニズムが伝わってくる白亜の駅舎は、どこか地方の銀行の支店に見えなくもないですね。

 訪れたのが日曜日だったこともあってか、駅舎のみならず、構内などにもゆったりとした空気が流れていました。

 しかしこの雰囲気も年々変わりつつあるようです。このあたりは、名古屋の中心部に普通電車でも40分程度で到達できるという立地条件のため、近年急速にベッドタウン化が進んでいます。駅舎の後ろにも大きなマンションが写ってますね。

 伝統産業に加えて、名古屋近郊のベッドタウンへ。瀬戸線のこんなのんびりした光景が見られなくなるのも、そんなに先のことではないかもしれませんね。

 ※この駅舎は改築工事に伴い解体され、現存しません(2001.4加筆)。

 参考文献:「旅」97年1月号付録「日本の鉄道全駅駅名総覧9938」
尾張瀬戸駅(旧駅舎)全景 尾張瀬戸駅(旧駅)ホーム
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大阪市交通局御堂筋線 天王寺駅Tennoji
 JRの天王寺駅は奈良・和歌山へのターミナルとして有名ですが、地下鉄にも天王寺駅はあります。こちらも運輸上の区切り駅で、半数の電車がここ天王寺で折り返します。ホームは2本。上下線に挟まれて、折り返し用の中線があります。

 御堂筋線は開業年次が古く、威信をかけて作られたからか、ロシア地下鉄もびっくりの地下空間を持った駅が多いんです。この駅は昭和13(1938)年の開業です。

 ただ、その中でもひときわこの駅に惹かれるのは、梅田やなんばなどと比べ、開業以来あまり手を加えられていないからでしょうか。とりわけ照明が目を引きます。

 梅田や心斎橋などにもシャンデリア風の灯具が付けられていますが、それらに比べて薄暗く感じられる構内。天井に縦横に梁が通っていて、光が行き届かないからかもしれません。

 中二階からホームを眺めると、ずらりと吊られた照明が壮観です。また梁の隅には小さな灯りが取り付けられていたり、階段にも独特の形をした照明がつり下げられていたり(下右写真)と、灯りに対するこだわり、遊び心が伺えます。

 そして、その灯具が醸し出すのか、全体的にレトロチックな雰囲気。昭和30年代の雰囲気が、そこに漂っています。

 大阪にお越しの節は、天王寺から梅田まで、地下鉄に乗られることをオススメします。この駅をはじめ、いずれも個性的な駅があなたを待っていますよ。

参考:「市営交通80年のあゆみ」大阪市交通局刊
天王寺駅ホーム 天王寺駅ホーム 階段の灯具
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近江鉄道八日市線 新八日市駅Shin-yokaichi
 JR東海道線の近江八幡駅から、黄色い2両編成の電車に乗り換え、単線の線路対向電車と交換しながら進むことしばし、この駅に到着します。近江鉄道線のジャンクション・八日市駅の一つ手前の駅です。地元では八日市と区別するため、「しんよう」と呼ばれているとか。この駅もまた、非常に味わいのある駅舎を持つ駅です。

 2階建ての駅舎は、木造の凝った洋館風。正面から見てみると、縦長の2階の大きな窓が印象的で、前体的に整った建物、という印象を受けます。また入口の車寄せ部分の意匠も非常に凝った造りをしています。そして改札口周り。木製の柵と、ホームの木製ベンチが印象的です。脇の小さな事務室は平日のごく限られた時間帯だけ開かれ、硬券(厚紙きっぷ)を売っています。利用者はそんなに多くはないようです。このような駅がどうして立派な駅舎を持っているのでしょう。

 実はこの駅、八日市線の前身・湖南鉄道時代は終点であり、この駅舎は湖南鉄道の本社ビルを兼ねたものだったのです。それゆえのこの立派さなんですね。1913(大正2)年地区のこの駅舎、老朽化のため現在は2階は閉鎖されているようです。「どんな構造になっているのか行ってみたい」という欲求がふつふつと湧いてきますが、どうやらそれは叶わぬようです(^^

 列車が行ってしまうと、駅周辺は本当に静かになります。ホームのベンチに腰かけて、ぼんやりしているだけで和まされますし、なぜだか落ち着きます。これは昔の風景が持つ安心感なのか、それとも木という材質が持つ温かみなのでしょうか。休みの日の午後、古い駅舎を見物に、ふらっと訪れてみるのも楽しいかもしれません。

新八日市駅・外観 ホーム側からみた駅舎 改札口周辺と木のベンチ

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上田電鉄別所線 中塩田駅Nakashioda
 味わいのある駅舎が続きます。ひょっとしてかなりはまってしまうのではないかというこの「地方私鉄の駅舎」シリーズ、今回は長野県にある上田電鉄の駅です。

 駅舎は終点の別所温泉駅と極めて似ていますが、こちらのほうがややコンパクトな造りになっています。駅舎はどことなく無国籍風というか、独特な意匠を持った駅舎で、気になります。本来はもっと違った姿だったのだと思いますが、数度にわたるリニューアルでこのような姿になったと考えられます。一番そのままの姿が残されていると思われるのは、改札口まわり。現在は無人となり駅員はいない駅ですが、ホームとは柵できちんと仕切られた姿などに往時を偲ぶことができます。

 この駅を知ったとき、駅舎正面の壁の漆喰は崩れ落ちてひどい状態でした。そのまま改築されてしまったのだろうかと思って訪問したのですが、外壁は修繕され、何とか美しい姿を保っていました。ただツタに覆い尽くされんばかりの様子は変わらなかったですが(^^;;、それもこの駅舎の歴史のひとつでしょう。

 待合室内に並べられたおもちゃや絵本、貸し傘。置かれた鉢植え。ホームの花はきれいに手入れされ、ベンチには座布団が掛けられている。そういったところに、この駅が地元の人の生活に溶け込み、そして地元の方に愛されている様子をうかがい知ることができました。存続が危ぶまれているこの会社ですが、地域の愛される足として、この駅ともどもいつまでも存続し続けてほしいと願わずにはいられないひとときでした。

中塩田駅外観 改札口をホーム側から 改札口の様子

◆撮って出し
 中塩田駅の画像はこちらからどうぞ。

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