旅と鉄の盲腸にっぽんの駅 >素敵な駅へのご招待(JR・3セク編)1ページ

(JR・第3セクター編)


 日本全国津々浦々、たくさんの駅がありますが、その中でも独特の雰囲気を持つ駅があります。「旅情を味わえる駅」、「駅らしい駅」。この項に登場する駅は、私オススメの、そんな駅です。 


JR北海道宗谷本線 稚内駅Wakkanai
 言わずと知れた、日本最北端の駅です。

 私がこの駅を訪れるときはいつも夜明けなのですが、朝は夏でも寒いこの駅、「利尻」で着くと、まだ6時にもかかわらず、この列車から降りてくる人を受けるために、そば屋さんはもう開いています。これにまず感激。寒い体に暖かいそばが本ッ当に有り難いです。

 駅周辺は海側にどでかいホテルが建つ以外、昔ながらの風景が広がります。商店街や交差点名の看板の下には、ロシア語が書かれていて、独特の風情があります。利尻・礼文島への航路が出入りする稚内港は駅からすぐ。ドーム岸壁を見学がてら、見に行くのもよいでしょう。

 下の写真は、宗谷本線の行き止まり=日本の鉄道、北の行き止まりです。柵や囲みなどは何もなく、駐車場の横にありました。

 拍子抜けするくらい、簡素で単純な行き止まり標ですが、しげしげと眺めると、「はるばるやってきた」という思いがこみ上げてきます。

 私の稚拙な表現力や写真では到底表現できない、凛とした空気が漂っている駅です。是非訪れてみて下さい。あなたもきっと感激するはず。
構内の行き止まり標 稚内駅駅舎
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JR東日本東北本線 上野駅Ueno
 ご存知、東京から北への玄関口です。東京や新宿、池袋など、山手線内には大駅がいくつもありますが、この駅には、他の駅にはない独特の空気が流れています。

 現在中高年以上で地方から上京された方は、この駅に格別の思い入れを持った方が多いと思います。昭和30〜40年代、「金の卵」と呼ばれ、多少の希望と大きな不安を胸に、東京に集団就職で上京したこの方達が第一歩を記したのが、この駅だからです。

 「仕事が辛くて、何度も投げ出して故郷に帰りたくなって、この駅に来て故郷行きの列車を何時間も眺めて過ごした」というような話はよく聞きます。その人達にとってこの駅は、未知の地東京の中で唯一の「故郷の末端」だったのでしょうね。かの石川啄木も、 

 ふるさとの 訛なつかし 停車場の 人混みの中に そを聞きにいく

という短歌を残しています(歌碑は入谷口近く、新幹線乗換改札口付近にあります)。

 下右写真は、中央改札口です。天井の壁画の名は「自由」。この改札をくぐって故郷に帰るとき、その人は「自由」になれたのか、それとも…。

 北行きの長距離列車は、この改札奥、地平ホームから出発します。新幹線が開通し、長距離列車は常磐線と夜行列車のみになりましたが、往時の面影を今も色濃く残しています。

 新幹線の開通で、上野駅が果たす「北への玄関口」の役割は薄らいでしまいましたが(上野駅を通過する「やまびこ」があるんですね。何だかねえ…)、「あヽ上野駅」にあるように、いつまでも多くの人達の「心の駅」であって欲しい、と願わずにはいられない、情感溢れる素敵な駅です。

上野駅駅舎 上野駅中央改札
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JR西日本山陰本線 鎧駅Yoroi
 兵庫県北西端、日本海を望む高台にあるのがこの駅です。

 ひとつ隣は鉄橋で有名な餘部(あまるべ)、ということもあり、そちらのほうが有名かもしれません。一方の鎧駅は鉄橋があるわけでもなく、周囲に観光地があるわけでもなく、加えて人家もそんなに多くなく、と、餘部に比べるといたって静かな雰囲気を持った駅かもしれません。

 私がこの駅を推薦するのは、駅からの眺めです。豊岡方面行きのホームから、小さな入り江と漁港を望むことができます(パノラマ画像はこちら。多少ひずんでます。)。また、入り江を見渡せる位置には木製のベンチがあり、天気のいい日ならそこに腰掛けてゆっくりとお弁当、というのも楽しいかもしれません。

 一幅の絵画を見たときの印象が人それぞれ違うように、この駅に降り立った感想も人によって違うと思います。穏やかさを感じるのか、はたまた寂寥感か…。だから私は敢えて、「この駅はどういう感じの駅なのか」ということはあまり書かないでおきます。これから訪れる方の楽しみを取ってしまうことになるかもしれませんから…。どうしても気になる方は、訪れてみてください。閑散線区でもあり、時間もかかります。けれど、宮本輝の小説「海岸列車」に出てきたり、テレビドラマ「ふたりっ子」「砂の器」のロケ地になったり、あるいは青春18切符のポスター写真になったり(似たような構図で撮った写真はこちら)と、多くの人が何かを感じる駅には間違いないようですので、行ってみて得るものがなかった、ということは多分ないと思います。

 この駅に何が待っているのか。それはこの駅に降り立った人のみが知りえる楽しみなのかもしれません。

鎧駅ホーム 鎧駅改札口からの様子

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御岳堂駅駅舎JR東日本気仙沼線 御岳堂駅Mitakedo
 宮城県北東部、前谷地と気仙沼を結ぶ気仙沼線の駅です。

 駅自体に特徴があるわけではありません。付近の景色が特に良いというわけでもなく、近くに著名な観光地があるというわけでもありません。ごく普通の、どこにでもある無人駅です。

 しかし、何か気になる駅なのです。お盆に訪れてみました。

 駅は東北の駅らしく、周囲に田んぼの広がる中にあります。列車が来る時間が近づくと、お盆をふるさとで過ごし、東京などに帰る家族を送るために車がやって来て、里の小駅はひとときの賑わいを見せます。

「正月には帰って来ンのが?」「体に気をつけて…」そんなやりとりが聞こえてきます。

 やがて列車がやって来て、乗客は日常へと帰っていきます。列車が行ってしまうと、ホームには蝉の声が残るのみ…。初めてなんだけど、どこか懐かしい。そんな駅です。
御岳堂駅全景
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