旅と鉄の盲腸にっぽんの駅 >素敵な駅へのご招待(JR・3セク編)5ページ

 JR東日本東海道本線 根府川駅Nebukawa
 大阪から乗った夜行急行「銀河」を熱海で降りて、始発の普通電車で3駅。この駅に到着しました。春か秋なら、この駅で日の出の時間を迎えます。

 根府川駅。東海道本線では数少ない無人駅です。ホームは崖地の途中にあり、駅舎は崖の上にあるという、ちょっと変わった構造の駅です。このため、跨線橋と同一平面上に駅舎があります。

 この駅をお勧めするのは相模湾が一望できるからです。東側に海が開けているため、日の出はばっちり見ることができます。旅先で見る日の出はまた格別。すっきりした気分になれますよ。東京から快速で約時間半、手軽に旅気分が味わえるためか海を見に訪れる人も多いらしく、待合室にはここを訪れた人の感想や、季節によって俳句などが飾られていたりします。

 今は穏やかなこの駅、実は悲しい歴史を持った駅でもあります。さきの関東大震災の際には、ここで大規模な山津波が発生、根府川駅は停車していた列車ごと下の相模湾に押し流され、多数の死傷者が出たそうです。また崖下の相模湾海中には、今も駅の一部と思しき石積みが見られるそうです。

 今は慰霊碑にその名残をとどめるくらいの、非常に穏やかな表情の駅ですが、こんな悲しい出来事があったんですね。慰霊碑は駅舎横にあります。

 この駅、関東にお住まいの方なら、思い立ったら手軽に行けます。冬はちょっと寒いかもしれませんが、手軽に旅気分が味わえる絶好の場所だと思います。

 次の休みに、出かけてみませんか。派手な観光地ではありませんが、駅周辺には見どころも多少あります。また駅に佇んで、茫洋とした海を見ているだけでも結構癒されるかもしれません。

(備考)
「関東の駅100選」入選駅
根府川駅駅舎 海が見えます。 根府川駅ホーム
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R東日本横須賀線 北鎌倉駅Kitakamakura
 東日本の駅が続きます。横須賀線の電車に乗って大船からひと駅、沿線に緑の色が濃くなるとこの駅に到着します。駅近くに学校が多いのか、学生の姿が目立つ、活気のある駅です。

◆独特の雰囲気
 まずホームから目を引くのが珍しく舗装されていない側道と、小さなトンネル。鎌倉独特の岩盤を素掘りしたもので、生活道路として使われているようです。付近にもトンネルをうまく利用したレストランなどがあり、これらを見て歩くのも結構楽しいですよ。トンネル越しにホームを見るとこんな感じになります。それから構内踏切。最近都市部では殆どといって見かけないものが、ここでは健在です。15両編成用の長ーいホーム、最新型の電車とのアンバランスがまた楽しい。

◆境内を横切る電車
 北鎌倉には円覚寺(えんがくじ)という有名なお寺がありますが、実は横須賀線がこのお寺の境内を横切っているのはご存じですか?北鎌倉駅を出た横須賀行きの電車が、一瞬緑が目立つ林を通りますが、それです。参道をぶつ切りにされた円覚寺、入り口から見るとこう見えます。どうしてこうなったのかはこの路線の性格にあるそうで、横須賀線というのはもともと軍事目的として開通した路線だったらしいんです。狭いところに無理矢理線路を敷いたために、こうなってしまったとのこと。線路を通すためには由緒ある寺も関係なく横切ってしまう。当時の軍の力って、恐ろしかったんですね。とはいえ、今となっては車窓にちょっとした変化をつけてくれる楽しい場所です。夏などは涼感たっぷりの風景が展開します。

 ・・・映画やCMに何度も登場しているこの駅、是非ご来訪ください。ここには到底書き尽くせない、独特の風情と風景があなたを待っているはず。オススメはアジサイの花が咲く時期。雨の北鎌倉駅も、また格別ですよ。

(備考)
「関東の駅100選」認定駅
北鎌倉駅駅舎 ホーム遠景 電車と構内踏切
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R九州肥薩線 大隅横川駅Osumi-yokogawa
 古い建物に興味のある私にとって、古い駅舎は非常に興味を引く対象物です。この駅も、駅舎に魅せられて訪れた駅のひとつです。

 肥薩線は運輸上重要な路線として、かつては鹿児島本線として開業した、歴史の古い路線です。敢えて険しい山中にレールを通したのは、海岸沿いを通すと海からの艦砲射撃を受ける恐れがあるため、これを避けるためだったそうです。そのような古い路線であることに加え、開業当時からの駅舎をそのまま使っているところも多く、非常に興味を引く路線です。

 この大隅横川駅もまた、開業当時の駅舎をそのまま使っている駅のひとつです。この区間の開業が1903年のことなので、もう100年以上、ここにあることになります。少し薄暗い駅舎内に入ると、木製の改札口と、凝った灯具が目に付きます。そして高い天井、漆喰塗りの壁。

 この肥薩線には、前述のように開業以来の古い木造駅舎が多く存在します。この大隅横川駅の近くにも嘉例川駅という、建物的には非常に似た構造を持つ駅舎が存在します。そのようななかで、とりわけ何故この駅が気になるのか。それは、他の駅に比べて、駅として機能している割合が大きいからのような気がします。嘉例川をはじめとした駅舎は比較的人口の少ない所にあったり、或いは山の中にあったり。一方この大隅横川駅は町の中心部にあって学校なども近く、駅の利用者も多そうです。つまり保存されたひとつの形として以上に、ちゃんと多くの人が利用する駅として機能している。そこに魅力を感じるのだと思います。

 そして私が惹かれる最大の理由は、他の同じような駅に比べて、観光的要素が大きくないこと。嘉例川や大畑などは、パンフレットが充実していたり、備品が新しくなったり、案内の人が居たり、観光列車が長時間停車したりと、他の駅とは違った何がしかの観光的要素を備えているのですが、この駅の場合、よく言えばこの駅本来の姿のまま推移している、悪く言えばややほったらかし。

 もちろん、一定の観光的要素は持たせた駅になっているのですが、私が訪問した時は、出札口跡には何かに使おうとしてそのままなのか、ゴミ箱となってしまった謎の大きな壷、そしてなぜか事務椅子がどん、と置かれていたりしました。観光特急から降りてくると、目に付くのは事務椅子…。こういった「ややお疲れ気味な駅に放置されがちな、微妙に生活臭漂うアイテム」が、観光特急が停まるような駅に堂々と存在することに、親近感を覚えずにはいられません。馬鹿にしているわけではなく、このような俗化傾向の少なさが、この駅の素顔をそのまま現しているようで、私が虜になってしまった最大の理由だと考えています。

 人それぞれ好みが違うように、駅に対してもまた、興味の向き方が違うと思います。今回は私が好きな大隅横川駅を挙げましたが、駅舎が好きな方にはたまらない駅が数多く存在する肥薩線。じっくり時間を掛けて、あなたの好きな駅を探してみるのもいいかもしれません。

◆撮って出し
 大隅横川駅を含む肥薩線の古い駅舎で、特集組んでみました。こちらからどうぞ。

大隅横川駅・駅舎 大隅横川駅・駅舎内のようす
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R北海道日高本線 絵笛駅Efue
 日高本線は北海道の苫小牧から分岐する路線です。海岸線に沿って走る部分が多く海が車窓の友、という区間も少なくありません。しかし日高三石を過ぎると少し内陸を走る部分があります。絵笛駅は、その少し内陸に入り込んだところにあります。

 日高本線と言えば海ともうひとつ、車窓を楽しませる風景があります。それは広大な牧場を駆け抜ける競争馬たち。この駅は、牧場の中にあるような駅です。駅の背後は数軒の民家。その隣は空き地。その部分を除く3方が牧場です。この駅を通ったのはほぼ10年前、その時に線路のすぐ横で母馬の乳を飲む仔馬の姿を見、以来一度この駅をじっくり見てみたい、という思いを持っていました。そして今回、降り立つことができたのです。

 一両きりの気動車が行ってしまうと、このような環境なので周囲には何もなく、本当に静かです。そして遠くに聞こえる馬のいななく声。まさに「のどか」という一言に尽きる光景が、そこにあります。

 簡素なつくりの待合室で佇んだり、ホームに立って馬たちを眺めたり。この駅に2時間ほど居ましたが、この駅の2時間ほど、時間が短く感じられたことは覚えている限り、ありません。そこでのひとつひとつの行動に深い意味はないけれど、時間を忘れるほどの空間がありました。これが真に「癒されている」、という状態なのでしょうか。遠くでタイフォンの音が聞こえます。それがまるで夢のような時間から現実に戻る合図のように聞こえます。やがて、苫小牧行きの気動車がか細いレールの上をやってくるのが見えました。

 何もない駅ですが、人を癒す目に見えない何かがある。その心地よさは、是非ご自身で降り立ってみて確認されることをお勧めします。

◆撮って出し
 絵笛駅を含む日高本線の沿線で、特集組んでみました。こちらからどうぞ。

絵笛駅・ホーム入口から 駅名標と草を食む競走馬


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