初田牛駅旅と鉄の盲腸にっぽんの駅 >素敵な駅へのご招待(JR・3セク編)4ページ

 R北海道根室本線 初田牛駅Hattaushi
 根室駅を出た特急「まりも」折り返しの列車は、朝の原野を坦々と走ります。時折現れるエゾシカの群れなどを車窓から眺め、しばらく走ると、この駅に列車が止まりました。

 ほとんどの人が釧路まで乗り通すこの路線で、しかも雨の中、降りたのは私一人です。

 初田牛駅。北海道に多い、典型的な無人駅です。駅の周囲には、少し離れて数軒の民家などがあるほかは何もありません。聞こえてくるのは、少し激しくなった雨音と、線路を挟んだ所にある道路を時折通る車がしぶきを飛ばす音だけ。本当に静かなところです。

 駅の周辺を歩き、待合室でしばらく佇みます。やがて線路の向こうから、おっきな犬を連れたおじさんが一人、やってきました。「おそらくだれも来ないだろう」と高をくくっていた私にとっては、予想外の来客?でした。「おはようございます」というあいさつのあと、ほんの少し、とりとめのない話をしました。

 この地域は気候が良くないこと。いつもこのあたりを散歩してること。そして、乗降は非常に少ないこと。「ほとんど乗ることはないねー」、そう言い残して、犬を連れて待合室から出ていきました。

 たしかに、そうなのかもしれません。この駅の乗降人員は、1日4名。驚くほどに少ないです。しかしもともとこの一帯は、開拓期にはもっと多くの人たちが生活していました。

 ところが自然の厳しさに堪えかねて、泣く泣くここを離れざるを得なかった人たちが増え、人口も徐々に減っていきました。同時に駅を利用する人も減っていき、今では乗降人員4名の駅として残ってしまった、というわけです。

 つまり、出来た当初はもっと活気のある駅だったのです。「もともと何もないところに駅があるわけがない」、駅に置かれたノートに記された地元の方の書き込みが目を引きます。今まで駅を見ながら旅をしてきましたが、「現在の状況だけでなく、取り巻く事情、時代背景を考えることが、真にその駅を見ることにつながる」という思いを強くしました。

 JR初田牛駅、乗降4名。しかしながら駅舎はきれいに掃除され、ホームには美しく手入れされた花々が4人の乗降を待っていました。

 少ないながら利用者が居るから掃除され、花だって植えて世話をする人が居るからそこに咲く・・・。

 駅に人は居ないが、そこはかとなく人の生活を感じる。そして、周囲には何もないが、目に見えない何かがある。そんな素敵な駅でした。

 ※この駅に行かれる方は、野生動物には十分ご配慮&ご注意ください。
駅舎を望む 初田牛駅駅舎
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