旅と鉄の盲腸 > にっぽんの駅 > ?な駅へのご招待(私鉄編)
周りには何もないのに、駅がある。駅があるのにほとんどの普通列車は通過する。そんな変な駅が存在します。その駅の存在価値っていったい・・・。とにかく見ていきましょう。
南海和歌山港線 水軒駅Suiken
四国徳島航路が接続する、和歌山港駅の次の駅、この線の終点です。
生まれてからずっと南海沿線住民をやっていますが、この駅を訪れるのは初めてです。和歌山港までなら1日42往復の電車があるのですが、水軒までは1日2往復。電車で行くのは至難の業です。
和歌山市発9時17分。この電車が水軒まで行くので、早速乗り込みます。
和歌山港を出ると、車内は鉄っちゃんと思しき人達だけになります。この日は10人ほど。工場のタンクや倉庫が並ぶ風景の中を結構なスピードで走り、やがて目的の水軒駅に到着。
駅員配置なし、ホームに屋根なし、駅舎なし、周囲にも何もなし。ないないだらけの水軒駅は、駐車場の脇に2両分のホームだけがポテッとあるだけの簡素な駅でした(下写真)。
電車が着いたときは、乗ってきた鉄っちゃん達が思い思いに写真を撮ったり、周囲を散策したりと賑やかだったのですが、みんな折り返し乗車。5分後、私だけを残して、折り返しこの駅発の始発電車が出発します(下写真)。次に電車が来るのは15時過ぎ、しかもこれが今日の終電・・・。たぶん、日本で一番早い終電だと思います。
一人になってしまいました・・・。
とはいえ、周りは開けていて、橋や倉庫などの構造物も多く、孤独感というものはありませんでした。
駅周辺をウロウロしていると、すぐ隣に養翠園という日本庭園発見。しかし、電車など公共交通で来る人は皆無で、店のおばちゃんもひまそうでした。
この駅、隣接する和歌山南港の木材運搬の為に県が設置したそうです。でも、実際にここから木材を搬出したことはなかったそうです。開業時点からコケてます。
ちなみに、久保町駅から水軒駅までの4.6kmの区間は和歌山県が第3種鉄道事業者(自前の線路を他社に貸す)、南海が第2種(よそから線路を借りる)になっています。
南海も、線路が自前じゃないから勝手に廃止できないし、県だって自前で電車を走らせる訳にもいかないし、どーしょーかなこれ、とみんな悩んでるんでしょうか。
かといって放っておくわけにもいかないから、和歌山港〜水軒間の2往復は、路盤維持の為だけに走っている、ということなのかもしれません。
周辺には比較的観光スポットも多いので、これらへの拠点駅として発展させることも可能だと個人的には思うんですけど、県・南海ともその気はないみたいですね。
(2002.5加筆)
この駅を含む和歌山港線和歌山港−水軒間は、2002年5月26日、廃止されました。現在この駅はありません。
駅データ
所在地 | 和歌山県和歌山市 |
開業年 | 昭和46年3月(平成14年5月廃止) |
列車本数 | 2本/日 |
神戸電鉄有馬線 菊水山駅Kikusuiyama
とにかく電車が停まらない駅。新開地駅では「菊水山通過」の文字がやたらと目につきます。
新開地から急坂を走ること約10分、両端を50‰の勾配で挟まれたこの駅に着きます。降りたのは当然私一人。
「うわっ、降りたで」「どこに住んでんねん!」地元高校生のツッコミを受けつつ下車しました。
駅前には人家なし。一方は山、一方は砂防ダムという、山の中の駅です。駅は2面2線の相対式で、上下ホームは構内踏切でつながってます。駅自体は結構きれいです。駅を出てみましょう。
駅へ通じる階段入口です(下写真)。登山道ではありません。この横に神戸市の下水道施設がありますが、駅前にある建物はこれだけ。ここから駅へはひたすらに階段を登ります。道路はここまでなので、車で駅には行けません。
ハイキングよろしく駅にたどり着くと、聞こえるのは砂防ダムから流れ落ちる水の音だけ。恐ろしいほど静かです。
することがないので、腰かけて非常食のあんパンを食べます。
神戸電鉄は神戸市中心部と住宅都市三田を結ぶ通勤路線。電車の本数は多いんですが、この駅には鈴蘭台、西鈴蘭台駅を始終着とする普通電車しか停まりません。ほとんどの電車は、。
本数が少ないならのんびり出来るんですが、ここまで通過されると、さすがに世の中の流れに取り残されている気になります。
電車の中の人と目があった。向こうはどう思ってるんでしょう。
殆ど電車が停まらない雨の無人駅でひとりあんパンを食う男。
めでたく不審者に決定。おめでとう、俺。
今日は雨だったため、私が居た2時間の間に出会った人は皆無でした。一部を除き家がほとんどないから、普段はハイキングや登山者が利用するのみようです。が、定期券利用者もいるとのことです。下水道施設の方か、付近の民家の方でしょうか。
昼間は陽の当たる明るい駅ですが、夜はこわくてとても降りる気にはならない駅です。
(追記)
この駅は、2005年3月より休止扱いとなっています(駅としての籍は残っています。)。現在、この駅に停車する電車はありません。
駅データ
所在地 | 兵庫県神戸市北区(にあるとは到底思えないほど、静かです。) |
開業年 | 昭和15年10月5日 |
列車本数 | 下り47本、上り48本/日(平日)。数字にしてみると案外多い。 |
岡山電軌 中納言電停Chunagon
「伊勢エビ料理の店」ではありません。岡山駅から東山へ向かう岡山電軌の停留所です。
下の写真は全景ですが、また分かりにくい。待合所なし、ベンチなし、歩道なし。停留所の看板は電柱に付けられている広告看板タイプのもの(下左)なんですが、停留所横の和菓子屋さんが「栗中納言」という和菓子を売っているので、ここの看板のようにも見えます。ぼんやり歩いていると通り過ごしてしまいそうになります。
電車は道路が緑色になっている部分(安全地帯、のようですが正確には安全地帯ではない。)に停まりますが、ここは思い切り車道部分にあるので、ここで堂々と待っていると間違いなく車に轢かれます(下写真)。
そこで、道の両脇で電車を待つことになりますが、ベンチがないんで立ち待ちになります。よそ見していると立ち話しているように見え、時々やって来た電車が通過してしまうことがあるので、電車が来たら1歩前に出て、「乗る」という意思表示をしましょう。
ただ、あまり前に出過ぎると車に轢かれてしまうので、出過ぎないことが肝要です(いや、マジで)。電車から降りるときも車には充分注意しましょう。
路面電車の電停は簡単な造りのものが多いですが、その中でもひときわスリリングな構造の電停です。
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