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駅木・駅花(エキボク・エキバナ)への旅


 沿線に咲く四季折々の花。車窓からも眺められますが、時間があれば列車を降りて、心ゆくまで眺めてみませんか。ここでは、そんな車窓・駅で花見ができる駅のご紹介です。なお、花の見ごろはあくまで目安で、その年の気候により大きく異なります。確認のうえお出かけください。


JR西日本阪和線 山中渓駅Yamanakadani

 春のある日、大阪府南部にある和泉砂川駅。下り快速電車からの乗り換え客は、ハイキングと思しき人たちと家族連れ。乗り換えた普通電車は坦々と大阪平野を走り、しばらくすると大阪府と和歌山県の県境近くにさしかかります。それまで車窓の主だった家並みは途切れ、やがて緑濃い山々が見え隠れするようになります。そして阪和道の高架をくぐってしばらくすると、窓の外は突然淡いピンク色に変わります。電車のスピードのせいで、あたかもそれは桜色の屏風を眺めているようにも見えます。車内からは歓声とも驚嘆とも取れる声が漏れ、電車はそのままスピードを緩め、駅へ進入します。

 桜が満開の時期、山中渓駅へのアプローチはこんな感じで始まります。桜は駅の手前から始まり、途切れなく駅まで続いています。山中渓は、桜の中にある駅です。大阪府下では河内堅上などと並ぶ、駅で桜が眺められるお手軽なスポットです。ただ河内堅上と違うのは、桜の名所が駅の目と鼻の先であること。山中渓は駅のすぐ西側にあり、ここに咲く桜が駅から眺められるのです。

 駅の敷地に迫る勢いで植えられている桜の本数は1000本とも言われ、山中川に沿った約1kmのエリアに咲き誇ります。このように数多くの桜があることから、シーズンには花見客が多数訪れ、普段は静かな委託駅もこの時期ばかりは応援の社員が駆けつけ、ひとときの賑わいを見せます。また駅がこのような立地ということもあり、駅のすぐそばでレジャーシートを広げ、花見に興じる人が数多く見られるのも、この駅ならではの光景なのかもしれません。ホームにはカメラマン、ホームのすぐ横には花見をする人。それぞれに桜を愉しむ人が見られます。

 全体的な印象は、一言で言ってしまうと「人はそこそこ多いが、桜ならではの絢爛豪華な光景を見て楽しむならここ」という感じです。1000本が狭いエリアに植えられ、加えて駅からもその光景が見られるという場所はなかなかありません。見頃の時期にはその美しさに溜め息しか出ない光景が、大阪から60分のところで待っています。関西在住の方なら、思い立ったらすぐ出かけられます。春の予定がない午後に、お勧めしたい場所です。

山中渓駅上りホーム 山中渓駅近くから

◆例年の見ごろ:3月下旬〜4月上旬(満開の時期はこのうちの1週間程度)

◆撮って出し
 山中渓駅の画像はこちらからどうぞ。(画像が多いため、表示に時間がかかる場合があります。)

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JR東日本常磐線 ノ森駅Yonomori

 夜ノ森駅は、福島県浜通り地域の中心、いわきから少し北へ行ったところにあります。日本に鉄道駅は1万弱あるそうですが、このうち「夜」という字を使うのは7駅しかありません。地名の由来は、かつてこの地が領土争いになり、所有を主張する双方の殿様が「ここは余の森である」と言って譲らなかった、という故事によるものだそうです(説のひとつで、他に諸説あります。)。私もここがツツジの名所であるのは知っていましたが、直接行くきっかけとなったのは、この、童話に出てくるようなちょっと不思議な駅名に惹かれたからでした。

 時はゴールデンウィーク。折りしもツツジの時期と重なり、降り立った駅はその名前からくるイメージとは異なった、非常に長閑ながらも活気ある駅でした。普段は静かな所であろうこの駅は出店が並び、窓口には構内に咲き誇るツツジを一目見るために、入場券を買い求める客が列を作っていました。ツツジは掘割になったホームの両側の土手にあります。

 この夜ノ森のツツジを紹介する上で、半谷六郎の話は避けては通れないところでしょう。半谷六郎はこの地に生まれ、農学校を出るとすぐに父・半谷清寿が開拓した農場に入り、父の遺志を受け継ぎ、夜ノ森開拓に努めます。そののち東京に出て証券業界に入るものの、時折帰郷するたびに見る寂しい駅と、「夜ノ森」という、ともすれば暗いイメージを持たれてしまう故郷を何とかしたいと思うようになります。そうして、昭和14(1939)年から数度にわたり、駅の両側にツツジを植えたのが、この駅に咲くツツジの始まりなのです。半谷六郎は、後に町長にもなっています。

 現在、そのツツジは5000本ともいわれ、毎年5月には、構内を鮮やかな色で埋め尽くします。その種類も豊富で、中には今までに見たこともない色の品種もありました。また、常磐線を走る特急「スーパーひたち」号も、この時期になるとここで徐行運転をするサービスをしています。普通電車は上下とも1時間に1本程度ですが、ホームには常に人の姿があり、備え付けられたベンチでは、ツツジを見に来た人たちが思い思いの時間を過ごしていました。

 故郷に色とりどりの錦を飾る。地元の名士がした粋な計らいは後世へと引き継がれ、今やそれは夜ノ森が名実ともに「花の駅」として知られるほどの立派なものになっています。

夜ノ森駅のホームからみるツツジ 夜ノ森駅のホームとツツジ

◆例年の見ごろ:5月上旬〜5月中旬

◆足をのばして:駅の近くに夜ノ森公園という公園があります。ここは桜の名所で、公園に至る道路も見事なまでの桜のトンネルが出現します。また見ごろの時期になると、夜にはライトアップも施されます。見ごろは4月上旬です。

◆撮って出し
 夜ノ森駅の画像はこちらからどうぞ。(画像が多いため、表示に時間がかかる場合があります。)


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