旅と鉄の盲腸にっぽんの駅 > 駅木・駅花への旅

駅木・駅花(エキボク・エキバナ)への旅


 沿線に咲く四季折々の花。車窓からも眺められますが、時間があれば列車を降りて、心ゆくまで眺めてみませんか。ここでは、そんな車窓・駅で花見ができる駅のご紹介です。なお、花の見ごろはあくまで目安で、その年の気候により大きく異なります。確認のうえお出かけください。


JR四国予讃線 高野川駅Konokawa

 松山を出た予讃線は、途中向井原(むかいばら)という駅で内子経由と伊予長浜経由に分かれます。特急は時間短縮のため、距離の短い内子経由を通ります。この高野川駅は普通列車のみが走る海沿いの長浜経由の部分にあります。

 それは5月の連休のことでした。目的地であった下灘駅まであと少しというとき、列車は駅に停車しました。それまでウトウトしていましたが、ふと顔を上げると、車窓はあまねくピンクと白に埋め尽くされていました。反対側の窓も同じような感じ。一瞬何が起こったのかと見ると、それらはすべて満開の花でした。窓の外すべてがツツジで埋め尽くされ、窓を開けると芳しい香りが漂ってきます。こんな、列車がツツジの中に入り込んだような駅もあるんだなあ・・・、それがこの駅の第一印象でした。

 下灘駅を訪問したあと、この駅を訪れたのは翌日のこと。宇和島行きの気動車が紫煙を残してゆっくりと去ってしまうと、静かです。聞こえるのは、花の甘い香りに誘われたミツバチがせわしなく飛び回る羽音だけです。両側には列車の中から見たように満開のツツジが続きます。みんなこっちを向いて咲いていて、ホームには私ひとり、ということもあってか、多くのツツジに一斉にこちらを覗き込まれているような気分になりました。しばらくハチの羽音とともに花見を楽しんだ後、駅の外に出てみます。

 駅舎のない無人駅で、周囲には数軒の民家とミカン畑が点在する、非常に長閑な所です。駅がある所は台地のような地形になっていて、かなり下を国道が走っており、その先には瀬戸内海が茫洋と広がっています。このような複雑な地形ですので、すぐ近くに海があることは駅から分かりません。またホームは台地上の切り通しの中にあり、この花に囲まれた駅が道路からも非常に目に付きにくくなっています。細い道をたどってくると、ツツジが帯状に咲いている。なんだろうと思って近づいてみると突然線路とホームが姿を現すというような感じです。ホームの静けさは、そのためなのでしょうか。この鮮やかな手品を見せられたような感覚、私の稚拙な文章では到底表現できません。ぜひ実際に行ってみて体感してください。

 そのツツジは、この季節に列車で訪れる人の目を楽しませる、知る人ぞ知る隠れた名所なのかもしれません。

高野川駅ホーム 高野川駅ホームからみたツツジ

◆例年の見ごろ:4月下旬〜5月中旬

◆足をのばして
 この駅の2つ八幡浜寄りの駅は、「青春18きっぷ」のポスターで有名になった下灘駅です。旅情あふれるこの駅から見る夕日の美しさは格別です。4月下旬〜5月中旬の日没時刻は18:45から19:00あたりです。また列車に乗ってしまえば松山まではおよそ30分程度。市内には日本三古湯のひとつである道後温泉、子規堂はじめ松山出身である歌人・正岡子規ゆかりの施設など、観光スポットがたくさんあります。またこれら観光名所を結ぶのは伊予鉄道。蒸気機関車型のかわいい列車「坊ちゃん列車」が走っていたり、日本で唯一、鉄道線と路面電車が交差する所があったりと、鉄道好きの方にも見どころが多いところです。

◆撮って出し
 高野川駅+αの画像はこちらからどうぞ。(画像が多いため、表示に時間がかかる場合があります。)

 もくじのページへ


R西日本関西本線(大和路線) 河内堅上駅Kawachi-katakami

 私が「駅に咲く桜」と言われて思い出すのは大きくふたつ。ひとつは静かな山里の小さな無人駅にひっそりと咲く桜。そしてもうひとつは、町なかの通勤路線の沿線に咲く桜。ここにご紹介する河内堅上駅は、後者のイメージが強いながらも、前者の要素も混じった少し面白い駅かもしれません。

 関西本線のうち「大和路線」と呼ばれる区間は、大阪と奈良とを結ぶほぼ純然たる通勤路線。通勤型や近郊型の電車が間断なく行き交い、平野と盆地を走る沿線に家並みが続く風景が広がります。しかしながら大阪府と奈良県の県境付近は、生駒山地に大和川が作り出した谷を、その作り主である大和川と複雑に絡み合いながら走る面白い区間です。河内堅上駅は、そのような「砂時計のくびれた部分」といえそうな所にあります。

 駅に植わっている桜は、下りホーム沿いの土手を中心に10本程度。そのいずれもが立派なもので、見る人の心を魅了します。やってくる電車は通勤電車ばかりですが、通勤電車と桜の組み合わせもまた乙なものです。私が訪れたときは桜すでに散りかけでしたが、春の陽気の下、通過する「大和路快速」の風に煽られて一面に舞い散る桜吹雪は、見事と言うほかないものでした。関西では「お花見駅」のひとつとして、ちょっとした名所になっています。

 さきにも書きましたが、大和路線は通勤路線です。大阪・奈良間は人の移動も多く、快速に乗ってこの駅を通過する方も多いと思いますし、また桜の時期なら車窓に流れる光景に目を向ける方も多いと思います。快速の車窓からなら、この駅の桜はわずか数秒程度。学校が早く終わった、営業先からの帰りだけど余裕がある。そんなときはちょっと普通に乗り換えて、この駅で降りてみません?電車は10分ごとに来ます。あなたがこの駅に降りるために割いた数十分以上のものを、この駅で見つけることが出来るかもしれませんよ。

 桜の花が咲く時期は、何かと身辺に変化が生じる時期。「快速」という止まらない大きな流れを自ら離れて立ち止まり、黙してただひたすらに咲く桜を眺めてみる。忙しい時や気ぜわしい時ほど、そういった余裕が必要なのかもしれません。
河内堅上駅ホームの桜 駅名標と桜

◆例年の見ごろ:3月下旬〜4月上旬(満開の時期はこのうちの1週間程度)

◆撮って出し
 河内堅上駅の画像はこちらからどうぞ。(画像が多いため、表示に時間がかかる場合があります。後日撮り直し予定)


前へ
次へ
TOPへ
にっぽんの駅へ

無料ホームページ掲示板