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駅木・駅花(エキボク・エキバナ)への旅


 沿線に咲く四季折々の花。車窓からも眺められますが、時間があれば列車を降りて、心ゆくまで眺めてみませんか。ここでは、そんな車窓・駅で花見ができる駅のご紹介です。なお、花の見ごろはあくまで目安で、その年の気候により大きく異なります。確認のうえお出かけください。


樽見鉄道樽見線 日当駅Hinata

日当駅・ホームの眺め 春は樽見鉄道にとって書き入れ時でもあります。後述する「淡墨桜」をはじめ沿線に桜が多いからで、この時期臨時列車が増発されます。ピーク時には2両編成の気動車はどれも満員で、その殆どが花見客という状態が続きます。

 このような路線ですので、木知原(こちぼら)や谷汲口など、桜を手軽に眺められる駅もまた、たくさんあります。いずれも素晴らしい眺めなのですが、このなかでもとりわけ推薦したいのがこの日当駅です。

 その理由は、何かと混雑が多いこの時期にしては比較的人が少ないこと。駅のすぐそばを通る国道157号線はこのあたりで大渋滞になることが多いのですが、それを除けばいたって静かなたたずまいの駅です。

 植わっている桜の木は10株程度ですがいずれも立派な木で、これらが駅に覆いかぶさるように生えています。周囲には取り立てて目立つような建物がなく、それがかえって桜を引き立てているように見えます。訪れたときはちょうど散り初めの時期で、谷間を渡る風に乗って花びらが舞い上がり、あたり一面に淡雪を散らしたような光景を目にしました。小さな駅舎にたった一人だったせいか、美しさを感じるとともに、ひとつの季節が去る寂しさ、そしてこれからまた新しい季節が始まるという期待感といったような、複雑な感情が去来しました。

 桜は古くから日本人と深くかかわり、広く愛されてきた花です。一時期にパッと咲いて一気に散る潔さが好まれてきたのでしょう。また桜の咲く時期は節目の時期。卒業など身の回りに変化が起こる、出会いと別れの季節です。それらの思い出の中の光景に桜が登場する、という方も決して少なくないと思います。桜花が咲く頃の思い出を、誰もが何かしらの形で持っている。それも、この花が好かれるひとつの理由なのかもしれませんね。

 そういった思い出をもう一度、一人静かに思い出してみる。そういうときに、この駅はピッタリなのかもしれません。

◆例年の見ごろ:3月下旬〜4月上旬(満開の時期はこのうちの1週間程度)

◆足をのばして
 この駅の3つ先、樽見鉄道の終点・樽見駅から徒歩で15分ほどの所に、「淡墨桜(うすずみざくら)」という桜の巨樹があります。散り際に花びらが薄く墨を引いたような色になることから、この名が付けられました。品種はエドヒガン。樹齢1500年という高齢のため、過去幾度となく枯死の危機がありましたが、その都度この木を愛する方たちの手厚い保護を受け、今なお立派な花を咲かせます。一帯は公園として整備されています。

◆撮って出し
 日当駅を含む、樽見鉄道沿線の桜はこちらからどうぞ。(画像が多いため、表示に時間がかかる場合があります。)

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子電鉄線 本銚子駅Motochoshi

 その日私は、クーラーがなくて蒸し暑い、たった1両きりの電車の中に居ました。外は梅雨の最中ということもあってうす曇り、細かな雨が降っていました。

 それでも1つ手前の駅でタイヤキを買い、この駅にたどり着く頃には雨も止み、地面も乾きはじめていました。

 片面のホームがひとつっきり、朝のラッシュ時のみ駅員さんが居るだけの小さな駅です。銚子電鉄本銚子駅。この駅にはアジサイが植えられています。

 関東では同じくアジサイで有名な箱根登山鉄道があるからか、この駅は箱根登山鉄道ほどは知られていないようです。駅には待合室があり、その前あたりには株は少なく、それが少々残念ですが、ホームの先端付近から次の笠上黒生(かさがみくろはえ)駅の少し手前まで、アジサイのトンネルが続きます。加えてこの路線自体が醸し出す、ローカルな、そしてどことなく懐かしい雰囲気が情感をかき立てます。

 駅を出たところに小学校、裏手に民家がありますが、線路が低い所を走っているからか、意外と閑静な環境にあります。ホームからアジサイを見ていると、葉っぱの上に1匹、アマガエルがうずくまっていました。静かなのでカエルも誰にも邪魔されることなく遠慮なく鳴くことができるようです。この駅も、どうやらゆったりとした時間が流れるところのようですね。待合室でお婆さんと2人、次の電車を待ちます。

 しばらくするとパラパラと音がしてきました。また細かな雨が降りだし、あたりの葉を艶やかに染めていきます。休み時間になったのか、小学校から黄色い声が聞こえてきます。

 外川ゆきがやってきました。雨が降っているので濡れないようにという配慮なのでしょうか、待合室のまん前に乗降扉が来るように電車を止めてくれました。

 犬吠埼への途中に立ち寄った小さなアジサイの駅は、ゆったりとした時間が流れる駅でした。ドアが閉まり、電車が動き出すと、開け放たれた窓から雨に濡れた夏草の匂いが漂ってきました。
 

本銚子駅全景 到着する電車

◆例年の見ごろ:6月中旬〜下旬

◆足をのばして
 7km足らずの路線ですが、沿線には観光スポットも多く、非常に楽しい路線です。地球の丸さを実感できる犬吠埼灯台(犬吠駅下車)、ヤマサ醤油工場(仲ノ町下車)、町並みやイルカウォッチング(外川下車)など、見どころたくさん。またこれらを見て歩く際にちょっと小腹を満たしたい向きにはぬれ煎餅(犬吠駅などで販売)、タイヤキ(観音駅で販売)などがあります。このように駅で独自の名物を売っている所が多いのもこの路線の特徴です。施設割引券などが付いた便利な一日乗車券「弧廻手形」が発売されています。

◆撮って出し
 本銚子駅を含む、銚子電鉄沿線の風景はこちらからどうぞ。(画像が多いため、表示に時間がかかる場合があります。)

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